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映画で学ぶ戦争の後遺症

 本年9月によみうりシネマ倶楽部で上映予定の『黄金のアデーレ 名画の帰還』を先日じっくりと鑑賞しました。ナチスに奪われた伯母の肖像画(後にオーストリアの至宝、オーストリアのモナリザと云われたグスタフ・クリムトの名画「黄金のアデーレ」)の返還を求め、国を訴えた1人の女性の奇跡と感動の物語です。

 

ヨーロッパではドイツ(ナチス)が台頭し、オーストリアを併合した時代。時の多くの市民がポピュリズムに踊らされ、熱狂的に彼らを出迎えたのも事実ですが、その中で多くのオーストリア人が祖国を棄て国外に脱出しました。私が一番好きな映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台も同じ時代の同じ場所。どちらも実話に基づくストーリー。そういえば、アデーレもサウンドオブ〜の主人公もマリア。観ながらさらに物語の世界にダイブしてしまいます。

 

終戦記念日が近づくと、第二次大戦前後を背景とした作品は観る者の心をより大きく揺さぶります。戦争により失った大勢の人命はもとより、家族や祖国を失った人達の深い哀しみが、平和ボケしてしまっている私の心に深く突き刺さります。

 

黄金のアデーレでは迫害の危機に晒されたユダヤ人のその後が物語の縦軸になっています。かつて「クイーン」でエリザベス女王を演じてアカデミー賞を受賞したヘレン・ミレンが、幸せを失い空虚な日常を乗り越え、家族と本当の自分を取り戻すために全てを捧げる力強い女性を魅力的に演じ、物語にぐいぐい引き込みます。お時間がある方にはぜひご覧になっていただきたい作品です。

 

また、この作品ではホロコースト自体にはフォーカスされていませんが、この余りにも悲惨な史実は、決して忘れ去られてはならないと多くの傑作を生み出しました。「シンドラーのリスト」「戦場のピアニスト」「ライフ・イズ・ビューティフル」などなど。子供達の世代にも引き継ぎたい作品群です。

 

世の中には知らないことやわからないことだらけ。でも、映画は色々な情報を私達にもたらし、立ち止まって深く考える機会を創ってくれます。今日も映画の神様に感謝!