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落語家の粋(いき)

江戸時代の日本で生まれ現在まで伝承されている「落語」。

子供の頃我が家では日曜日の夕方のテレビは必ず国民的娯楽番組「笑点」。

今ももちろん人気ですが、立川談志や南紳助が司会の頃の笑点は子供心に毎週待ち遠しくて仕方がありませんでした。

昔は娯楽が少なかったせいか、落語はもっと身近なものだったような気がします。

 

30数年前の話ですが、祖父の葬儀に全盛期の立川談志師匠がいらっしゃいました(親戚の親戚。叔母の義弟なんです)。

ひと通りのセレモニーが終わった頃、ご参列の方々を前に「せっかくだから、少し喋らせてもらおうかなぁ」とすっくと立ち上がり喋り始めた途端、皆があっという間に師匠の話に吸い寄せられ、一瞬にして場の空気が変わったのを覚えています。

何を喋ったのかは全く記憶にないのですが、「落語家って凄い!噺(はなし)のプロって凄い!」って肌感覚は今でも残っています。

 

最近、運動不足解消のためジムに通っているんですが、そこで自転車を漕ぐたびに毎回落語を一席聴くのが習慣になりました。

Amazon社が始めたAudible(オーディブル)という新サービスを利用しています(スマホアプリ・月額1500円で本の朗読の他に古今亭志ん生、柳家小さん、三遊亭圓楽、桂歌丸などなど錚々たるメンバーの落語が聴き放題)。

なかでも故談志師匠の落語を好んで聴いているのですが、まくら(演目前のお話)はいつも圧倒的に長くて、それだけでも相当面白い。

当時の世相を辛口かつ大笑いでぶった斬るは、昔話をやたら艶っぽく語るは、落語の未来を笑いに包んで熱く語るは、ブラックユーモアをふんだんに散りばめた話の裏側に造詣の深さと落語愛を感じてしまいます。

もちろん演目自体も耳から聴いているだけで鬼気迫る程の臨場感が伝わり、現役時代に観に行きたかったなあと後悔しきり。

 

落語は人を楽しませる「噺のプロ」が魅力たっぷりに観客を酔わせる時間。

爆笑ネタで腹の底から大笑いしたり、人情噺でホロリとしたり、演目自体と噺家の匠の技が織りなす日本にしかない最高のライブです。

さらに古典落語を聴いていつも感心するのは江戸〜明治時代の情景が目の前に広がるかのような気にさせてくれるところ。

古き良き日本を身近に感じる良い機会です。

「粋(いき)だねえ」だの「洒落(しゃれ)てるねえ」なんて言葉は今や死後ですが、忘れ去られてしまった古き良き時代の素敵な日本語の宝箱でもあります。

 

テレビ番組でも、2005年にジャニーズTOKIOの長瀬智也とV6の岡田准一主演のTBSドラマ「タイガー&ドラゴン」や、2007年のNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」が話題になりました。

笑点で現在活躍中の林家たい平師匠が主演した映画「もういちど〜家族落語〜」も2015年にシネマ倶楽部で上映し、大勢のお客様に喜んでいただきました。

この魅力たっぷりの日本の「粋」を今一度もっと身近なものに戻せないか、生活圏で楽しめる大衆娯楽に戻せないか、地元でお客様に日常的に楽しんでもらえないか、このところずうっと考えていて、関係各社(者)へのアプローチを始めました。

果たして実現できるか? 乞うご期待。